ベースラインが80年代らしい都会空撮オープニング。台詞回しも全体的にも軽め。定番の名刺がわりのひと騒動で言い放つ“make my day”、ちとダサい。序盤のアクションシーンは脈絡なく動きが重い。話の中心はソンドラロックに移る。法外の処刑という点では、シリーズに通じるが、アクションよりサスペンス感が増した内容。展開は悪くないが惹き付ける力は不足。悪役の女優が印象的である。それにしても女性がよく殴られる。後、相棒が死ぬの定石なのか、いくらなんでも雑な印象。
サンタクルーズの遠景ショットで流れるロバータフラック。エンディングも80年代っぽい。
ダーティハリー4評論(11)
サンタクルーズの遠景ショットで流れるロバータフラック。エンディングも80年代っぽい。
なんか西部劇を思わせる。
復讐を果たした女性は無罪放免になったけど、キャラハンはほだされちゃったのかな。
途中唐突にねんごろになっちゃったのは、女が自分を疑っているキャラハンを情で流そうとしたようにしか思えない。なかなかしたたかだね。女性の性は弱みであり強みなのかな。でも相棒みたいに説教臭く正義を語らないところは好感もてる。
イーストウッド監督作品に多い空撮から、発端のデート殺人場面など全編、夜のシーンも多いフィルム・ノアールのような陰影の深い撮影は、名匠ブルース・サーティーズ。
この後にイーストウッドと組んだ「タイトロープ」でも更にこの雰囲気を強く出している。
今作の犯人は、基地外で粗野な田舎白人(ホワイトトラッシュ)で、過去のシリーズに登場した悪役からすると、小物で物足りない印象もあるが、公開当時のキャッチコピーにある、5分に一度の見せ場に偽りない小気味良いアクションとイーストウッドの千両役者振りでとても楽しめる。
特にハリー刑事の悪党には老若男女問わず容赦ない対応振りは相変わらずで、ハリーにコケにされて復讐に来た不良青年を皆殺しにしたり、事件の発端でもあるアバズレ女を酒場でブン殴るところなど冷静に考えてると結構凄い。
ダイナー強盗やマフィヤの殺し屋を44マグナム(銃声が良い)で次々に片付ける場面やイーストウッドの初期作品に多くあった、リンチからの復活と逆襲のお約束場面も、逆光の照明と低音ドラムのビート共に現れるハリー・キャラハン刑事のカッコ良さ。途中で披露したオートマグナム拳銃の威力を見せつける名場面でもある。
とにかく理屈抜きで悪党を退治するのはいい。
名コンビでもあったソンドラ・ロック扮する姉が妹と共に集団レイプに合って人生を狂わされた経緯や復讐の告白場面などがある事で、ハリーの最後の計らいにも納得が行く。
事件の発端が重く悲しいので、公開時は、根暗(これも死語)映画と揶揄していた人(批評家)もいたと記憶しているが、犬との絡みや常連俳優とのユーモアのあるやり取りで、陰惨な印象は弱い。
イーストウッド監督作品としては、テンポも快調でソツなくこなしいるが、犯人の描写などに神経質で不気味な雰囲気もあり、次の事実上の監督作品でもある「タイトロープ」で更にその傾向は強まる。
後期のダーティハリーシリーズは、自分のプロダクション維持とワーナーからの要請による興行的側面の強い印象で、イーストウッドが力を入れた企画の不振の穴埋め的ポジションだと思うが、やはり、銃を構える姿を見るとワクワクして楽しめるのと、フィルム・ノアールなところは素晴らしい。
そういえば、この映画の初期の没脚本がチャック・ノリスの「野獣捜査線」に流用されたらしい。