「七月と安生」など監督としても高く評価される香港出身の俳優デレク・ツァンがメガホンをとった青春映画。進学校に通う高校3年生の少女チェン・ニェンは、大学入試を控え殺伐とした校内で、ひたすら参考書に向かい息を潜めて日々をやり過ごしていた。しかし、同級生がいじめを苦に飛び降り自殺を遂げ、チェン・ニェンが新たないじめの標的になってしまう。彼女の学費のため犯罪まがいの商売をしている母親以外に身寄りはなく、頼る人もいない。そんなある日、下校途中の彼女は集団暴行を受けている少年を目撃し、その少年シャオベイをとっさに救う。優等生と不良という対極的な存在でありながらも、それぞれ孤独を抱える2人は次第に心を通わせていく。「サンザシの樹の下で」のチョウ・ドンユィがチェン・ニェン、アイドルグループ「TFBOYS」のイー・ヤンチェンシーがシャオベイを演じた。第39回香港電影金像奨で作品賞、監督賞、主演女優賞など8部門を受賞。第93回アカデミー賞で国際長編映画賞にノミネート。
少年の君評論(20)
ただ!チョウ・ドンユイはマジでいい!かわいい!坊主でもかわいい!演技上手い!泣き顔の演技最高!彼女を観に行ったようなもんだからそこで大満足たんでヨシ!
映画は、教室で英語を教える主人公チェン・ニェンの現在の様子から始まる。「失われてしまった」というニュアンスを含む表現"used to be …"を説明しながら、彼女の視線はある女生徒に注がれる。その生徒の様子から、チェン・ニェンは自身の高校3年生の日々を思い出す…。
現在と高3時代の両方を演じるチョウ・ドンユイは1992年生まれの29歳(撮影時は26歳ぐらいか)なので、さすがに高校生パートに入ってすぐは違和感を覚えるが、幼く見える顔立ちのおかげもあってじきに気にならなくなる。
いじめの標的にされた優等生のチェン・ニェンと、夜道で集団暴行を受けていた不良少年シャオベイ。いじめの描写は重く苦しいが、孤独な魂が寄り添うように絆を深めていく2人の日々が切なく美しく、聖性さえ帯びるかのよう。
なお本作は小説の映画化だが、原作をめぐって(中国でも人気の高い)東野圭吾の代表作2作の盗作ではないかという騒動が持ち上がったという。具体的なタイトルを知ると、映画後半のミステリ要素のネタバレになりかねないので、鑑賞するつもりの方はなるべくそのあたりの周辺情報を事前に仕入れずに観るほうがいいと思う。
容赦ない描写と静かに寄り添うような映像で、
前作よりヒリヒリきた。
みんな褒めてるからこれ以上言う事ない。
検閲で公開遅れたのはエンドロールの「虐め撲滅キャンペーン」で解決したんじゃないかな?
内容の素晴らしさは守られていると思う。
虐めっ子が昔好きだった子に似てて
なんかモヤモヤしてしまったよ(^ω^)
冒頭、テロップで「いじめ」が本作の大きなテーマであることが示される。けれども私には、学歴至高主義、受験一色の学校の方がより衝撃だった。机に参考書や問題集を積み上げて壁を作り、互いに顔を背ける高校生たち。ひしめく制服の群れが朝は校舎に吸い込まれ、暗くなってから一斉に押し出されてくる。鬱々とした淀みが降り積もり、観ているだけで息苦しい。このところの天気も手伝って、彼らの居場所が、今自分がいる場所と地続きなのだと感じられ、心はさらにざわついた。
身動きが取れない日々の中、理不尽にいじめのターゲットにされた孤独なヒロインが、異世界の不良少年に偶然出会う。凄いのは、2人の関係が、すれ違いや接近と皆無なことだ。2人は徐々に惹かれ合うどころか、最初からぴったりと重なっている。どうしてよいか分からなくても、人を見捨てられない・放っておけない2人。当然、二度のキスで語り尽くせるような甘い恋物語では終わらない。この映画が描こうとしているのは、2人のその先であり、2人をはばむ歪んだ世界なのだ。後半、別室にいる2人の横顔のカットが右に左に連なっていくさまは特に素晴らしい。2人の独白が会話のように響き合い、ぞくぞくとした。さらに、終盤で正対する2人の正面カットの連なりも、無言にして雄弁な語りとなっていた。
2人が決死の思いで選び取った選択を、ぶち壊して真実を引きずり出そうとする大人たち。儚く美しい恋物語ならば、無粋な不要品でしかない。けれども、いじめや受験社会に囚われた世界の中で、もがきながらも前進していこうとする彼「ら」の光を守るには、格好悪い大人のずぶずぶなもがきや揺さぶり、おせっかいや押し付けが、起爆材になり得る。いかにも警察、な刑事のやり口には正直賛同できないが、彼の葛藤や無鉄砲さは、私たち大人が、自分に引きつけて考える価値があると思った。
どんなに急いでいても、どんなに胸に込み上げるものがあっても、ぜひ最後までスクリーンに向き合い、彼「ら」のその後を見届けてほしい。おかげで、観終えたあとは、曇り空を晴れ晴れとした気持ちで見上げることができた。