長編デビュー作「ヘレディタリー
継承」が高い評価を集めたアリ・アスター監督の第2作。不慮の事故により家族を失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンを訪れた。彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加だった。太陽が沈むことがないその村は、美しい花々が咲き誇り、やさしい住人たちが陽気に歌い踊る、楽園としか形容できない幸福な場のように思えた。しかし、そんな幸せな雰囲気に満ちた村に不穏な空気が漂い始め、妄想やトラウマ、不安、そして恐怖により、ダニーの心は次第にかき乱されていく。ダニー役を「ファイティング・ファミリー」のフローレンス・ピューが演じるほか、「トランスフォーマー
ロストエイジ」のジャック・レイナー、「パターソン」のウィリアム・ジャクソン・ハーパー、「レヴェナント
蘇えりし者」のウィル・ポールターらが顔をそろえる。
ミッドサマー評論(20)
平日の昼間、しかもコロナ禍の影響もあり、130席の劇場に観客は私一人。劇場でのホラー映画のふれこみのある作品(ディレクターズカット版)は久しぶりだったので、なんか嫌だな〜と思いながら鑑賞しました。前半部のダルさにうとうとしていると過剰なBGMで起こされることを繰り返していましたが、その分、中盤からの美しい映像やトリップ時のゆがみ、伏線回収は楽しめました(交わるシーンは不謹慎ながら笑ってしまいましたが)。今作は言わば若者たちが餌食になる生贄風習もの。凄惨なシーンの数々は大きな見どころになるのでしょうが、かの国の処刑動画を観てしまった後ではどうしても作り物として意識してしまうため、怖さは半減。鏡に写った顔の正体がわからずじまいだったり、主人公の最後の笑みの意味もよくわからないので、答え合わせのように、これから他の方のレビューを読みにいきます。
やっと観賞できた、上映期間中に観られてよかったです
見終わったあとに恐怖というよりは神経のすり減るような不安を感じた、久しぶりの映画館で2時間越えを抜きにしても
カルトのコミューンに赴いた若者が次々と殺される、なんて設定わりと良くあるけれど、例えば恐ろしい儀式の生け贄にされるとか、言い付けを守らずに殺されることはこの映画のメインの怖さではないような気がする、残酷シーンも控えめであまり怖くない
主人公は単なるホラー映画の犠牲者として殺されるのではなく、コミューンに取り込まれて女王にまでなってしまう、一人の人間の常識が覆される話だ、そしてその常識は私たちの社会のルールやモラルでもある
ホルガの風習はいかにもカルトチックで異様で受け入れがたい、こんな新興宗教がニュースで流れたら間違いなく殺人集団だと非難できるだろう、
しかしいったん社会というマジョリティを剥ぎ取ってコミューン内に踏み入っていまえば少数派で異常なのは私たちの常識で、神聖な掟を守らなかったり、先祖の霊を冒涜すれば断罪されるのはこちらの方だ
ホルガに着いてから学生たちは怪しげな薬草で幻覚を見続ける、ダニーが徐々にホルガに侵食されていくのをいつの間にか蔓延る植物の幻覚で表現しているのがアルチンボルドの肖像のようで美しく不気味だ
ホルガの民の生活は無言でダニーに問いかけ続ける「私たちが異常にみえるかもしれないけれど、あなただって薬で不安を紛らわし、他人に依存したり、食い物にしている、少なくとも私たちは幸福だ」と、
ダニーが最後にホルガを受け入れてしまうのはカルトの洗脳だけど、彼女のこれまでの生活が幸福なものではなかったからに他ならない、ダニーにとってあのラストは間違いなく解放と癒しのハッピーエンドだ
ダニーの中での現代社会の敗北が私たちの当たり前だと思っている常識は、実は依る辺ない脆弱なものかもしれないと思わせて、恐怖よりも不安な気持ちになるのかもしれない
穏やかな物腰や笑顔が時には頭蓋を粉砕する木槌よりも暴力になり得るとは
アリ・アスター監督の前作『ヘレディタリー』には、私の前提知識の不足もあり若干の飲み込みづらさを感じたのですが、同作でも描いた「家族の呪い」をさらに拡大解釈し、再提示してみせた監督の手腕には只々脱帽するしかありません!
あらゆるセリフや描写がその後の展開を暗示する緻密な構成に唸らされ、結末には否応なしに納得させられてしまいました。一枚一枚の画を一時停止して確認したくなるほどの情報量です。
グロテスクなシーンもあり好き嫌いははっきり分かれると思いますが、細部まで仕掛けが張り巡らされた演出は間違いなく映画館の大画面で見る価値あり。
主役のフローレンス・ピューは、感情の振れ幅が大きい、難しい役柄に説得力を持たせる素晴らしい演技でした。脇役で言えば、『デトロイト』で凶悪な警官を演じたウィル・ポールターがまたしても嫌味な役を好演。序盤から「こいつはまともな最期を迎えない」予感ビンビンです。
「今後はジャンル映画から離れていくだろう」とインタビューで語る監督の次回作にも、大変期待しています!
予告編で気になっていたところ、期間限定配信されていたので鑑賞。
導入から世界観に引き込まれました。綺麗な映像と不穏な音楽にわくわく感が掻き立てられますな〜と、この後の展開を楽しみにしていたのだが…… おや?おやおや?
ヘンリー・ダーガーっぽい絵がちゃちい。(予告でチラッと写るくらいだと雰囲気あったんだけど)飛び降りシーンが怖くない。(個人的に飛び降りシーンには弱くて、胸のあたりがひゅんってなるのだが、これはリアリティに欠けるのか全く平気)死体がちゃちい。(グロいと聞いていたのだが)ほんで、たいして何も起こらないまま、主人公にやりで終了…なんじゃこりゃ。
ホラーとしても、サスペンスやスリラーとしても弱く、どちらかと言えば愛憎劇か?
もっとぞくぞくしたかったです。
一番怖かったのは、コミュニティからの志願者の人が、最期の瞬間にファンタジーが解けてしまったところ。でも、熊さんが可愛い過ぎて、和んでしまったよ。