「パーフェクト・ブルー」の今敏監督が、数十年にわたり1人の男性を思い続けた女優の姿を、時間や空間を超えて描くオリジナル長編アニメーション。小さな映像制作会社の社長・立花は、かつて一世を風靡した昭和の大女優・藤原千代子のドキュメンタリーを作るため、人里離れた千代子の邸宅を訪れる。30年前に突如として銀幕から姿を消し、隠遁生活を送っていた千代子は、立花が持参した1本の鍵を見て、思い出を語りはじめる。千代子の語りは、いつしか現実と映画のエピソードが渾然一体となり、波乱万丈の物語へと発展していく。第5回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門では、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」と同時に大賞を受賞。そのほか、第33回シッチェス・カタロニア国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞するなど、国内外で高い評価を獲得し、ドリームワークスにより世界配給もされた。
千年女優評論(20)
執念を貫いて生きるというのは本当に美しいことですね。
最初に目に入ったのはショットとショットの繋ぎ方だった。
一般的な物語映画特にハリウッド映画はグラフィックの一致やアクションの一致でストーリーの連関性を保ったり、アクション・動きの変化で時間の経過を示したりする。スタイル映画はモンタージュシークエンスなどで早くショットを切り替えるのが普通。
しかし、この映画は、アクションの一致とグラフィックの変更という奇妙な組み合わせで時空を超えていき、人の興味をそそる。戦国、江戸、明治から月球まで千年の時空に演じきった女優を描く。今敏監督のこだわりが見られる。
内容的にはもはや現実と映画の虚構を分ける必要もなく、千代子はずっと追いかけることがわかると十分。全ては千代子自身の物語だと理解すれば十分。鍵の君を戦争と関連づけるのも一層映画を濃厚に作り上げた。反戦の意味も読み取れるのだろう。
特に、社長を妙に気にいる。カメラさんというツッコミ役もユーモアをも持ち込む。
深く考えるところ、みんな追いかけている、何かを。何かを大切にし(鍵)、何かの貴重な思い出を抱いてそれを追うための糧にしてる(出会い)。日常もその理想でいっぱい積み込まれてる(演じること)。追いかける自分も好きになる。だが、一旦心に穴が空いたら(鍵をなくす)、時間の経つにつれ、醜い自分を自覚する(年をとる)。諦めようとしたり(結婚)、日常から離れて反省したり(女優として消える)する。初心を忘れるというか、全て色が褪せる。
だが、死に近い頃、親切にしてもらうこととか(鍵が戻る)でまたその執着を思い出し、それを抱いて新たな夢に出発する。
千年女優、千年の魂、誰でも共感できる、また憧れる魂ではなかろう。
①フランスの友人から一番好きな日本のアニメ映画として薦められた作品。楽しめました。②とてもcleverなplot. 戦前からのスター女優(「原節子」がモデル?)の一生と、彼女の一連の主演映画(オマージュが沢山あってモデルとなった映画を知っていれば尚更楽しい)と、戦国時代以降の日本史とが目まぐるしく交錯する筋立てにグイグイと引き込まれる。③随所にヒネリがある映画だが、最高のヒネリはラストのヒロインのドライな台詞。最後の最後まで初恋の想いを貫く女性の純愛ものと思わせながら(裏返せば実は立花の純愛ものである)、最後の最後で彼女が生涯を通して貫きたかったのは実は「女優」であることの自己愛(自己嫌悪と表裏)だったのがわかる或る意味映画の風景を180度変えるオチが小憎らしい。④そうそう、「14番目の月」ネタがありましたね。勿論、映画の主幹に関わっているテーマでもあるけど、今監督はユーミンのファンなのかな(私と同世代!だし)
初の今敏!オールナイトで3本!
わずか87分の作品ながらも千代子の怒涛の30年間をテンポ良くコスプレ付きで魅せる。
この魅せ方がうまい。その時代時代に千代子が演じていた役の世界に入り込み、立花の抜群の解説付きでやたらわかりやすく観れる笑。
なのでやたら臨場感がある。戦国時代の役です立花がもはやセリフ込みで参加し始めたのには笑った。
ラストのあのセリフはただの恋する私ステキ的な脳内スイーツなのかはわからんがまあみんな共感できることなんじゃないのかなとは思った笑。
良作。