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孤独の暗殺者 スナイパー評論(7)
じわじわとくる緊張感。
主演、誰よ!?
あなたは変わった。
じゃあ、お前も変われよ。
変わっても会話のない二人の衝撃のラスト。
言葉は要らないんだ…
あらかじめ始まりがオチ(結末)となっているので話自体はそう引き込まれるものでもないが
フランス作品だけにシリアスな場面が淡々と進んでゆく。場面が映える音楽や派手な場面もほぼ皆無。
トーンが一定で、それだけに寒々とした雰囲気が続いてゆく。
まるで長編ドキュメント作品を見てるみたい。だが、ラストシーンは予想とは違い微かな希望が残る、監督の意図はここにあるのか。
悪銭身に付かず、勧善懲悪。
家族ある身なら犯罪に関わって危険にさらしてはいけない。
当たり前だが悪の道はここそこにある。
フランス映画らしい静かな展開と描写がいい。
原題の直訳は、
The Resistance of the Air。
射撃の名選手と言っても、企業で働き、家庭もあるごく普通の民間人が、犯罪組織のスナイパーになるという話。
主人公Vincentの家庭は、かろうじて家族らしさを保っており、資金が足らずに完成しない、冷ややかな風が吹き抜ける建設中の自宅のようでした…。
家計は苦しく、妻とは倦怠期。歯医者と結婚した妹を羨ましがる妻の視線が痛い。
母は5歳の時に出て行った。
引き取った要介護の父は酒と女に財産の全てを使い果たしていた。
好色な上に気難しい父が原因で、今度は妻が娘を連れて出て行ってしまった…。
悩み以外ないような毎日で、唯一の救いは射撃。嫌なことを全て忘れて狙いを定め、無になれる瞬間。
父を施設に入れられたら、
自宅の建設が進んだら、
妻子は帰ってくるかも知れない。
言葉は少なめですが、生々しいほどリアルな日常の閉塞感が伝わってきました。Vincentを中心に、周囲から圧縮された空気が押し寄せて来るようです。彼が高額の報酬目当てに暗殺を引き受けるには充分過ぎる理由でした。
ただ、勧誘された時、普通はもう少し驚きそうなものではあります(^_^;)。
ひたすら耐え忍んでいたVincentが犯罪の世界に足を踏み入れた途端、圧迫感を跳ね除けて解き放たれていく欲求。しかし表の世界で生き生きしていたのも最初だけで、裏稼業の闇はどんどんとVincentの集中力と冷静さを飲み込んでいきます。
最初のターゲットの命を奪った同じ日に、父親が召されるというのは何とも皮肉。
派手さはなく、終始薄暗い色調でした。
燃えた家は元には戻れない暗示かと思いましたが、弱った一般人を巧妙に取り込む甘い罠から果たして抜け出せるのかどうか、結論は出さずに余白を持たせた感じでした。