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シネマ歌舞伎 野田版 鼠小僧評論(6)
鼠小僧ってぇっと、強欲な問屋から盗んだ金を貧しい庶民に配り歩いた義賊として謳われているヒーローの1人だが、演劇界の鬼才が、そう易々と正義の味方に描くワケがない
ドケチで皆から疎まれている棺桶職人が、亡き兄の莫大な遺産を他人に譲られたため激怒
「ならば盗んじまえ」と、当時、芝居で流行していた鼠小僧になりきり、盗みを重ね復讐しようとする
しかし、天下の南町奉行・大岡越前まで巻き込み、挙げ句の果て、クリスマスまで担ぎ出す大騒動に発展していく
前作の『研辰の討たれ』ほどゴチャゴチャガヤガヤ喧しくないものの、鼠小僧を演ずる勘三郎のパワフルなフットワーク&マシンガントークで、ドタバタ畳み掛ける落ち着きの無い展開に笑い疲れてしまった
一方、散々引っ掻き回した後、金と肩書きにひれ伏す大衆の愚かさを突く貫禄に心動かされ、そして、鍵を握る子供との触れ合いに涙する
拝金至上主義を否定する説得力は『人類資金』なぞより遥かに凌ぐ
緩急自在にメッセージを投げ込む中村勘三郎の早過ぎる死を改めて惜しむ
では、最後に短歌を一首
『金の雪 染まる江戸の夜 駆け抜けて 嘘を盗り合う イブの白州よ』
by全竜