南極観測隊が悪天候に阻まれ、やむなく南極の地に置き去りにしてきた十五匹のカラフト犬の生への闘いと、観測隊員たちの姿を描く。脚本は「人生劇場(1983)」の野上龍雄、「色ざんげ(1983)」の佐治乾、「暗室」の石堂淑朗、「キタキツネ物語
THE FOX IN THE QUEST OF THE NORTHERN SUN」の蔵原惟繕の共同執筆。監督は「青春の門
自立篇(1982)」の蔵原惟繕、撮影は「キタキツネ物語
THE FOX IN THE QUEST OF THE NORTHERN SUN」の椎塚彰がそれぞれ担当。
南極物語(1983)評論(11)
南極の厳しい自然の中で冒険をして生死を共にした犬たちを、鎖につないだまま置き去りにせざるをえなかった。これは辛い。せめて首輪を緩いままにしておけば良かった、苦しませないように毒を飲ませておけば良かった、罪悪感に苛まれ打ちひしがれる。南極に戻って、犬を繋いでいた場所が雪に埋もれていて、そこを掘りおこすときの思いはどんなものだったか。凍りついた犬たちの死体を見つけたときはどんな気分だったか。南極に戻るまで長い一年だったろう。
もう一つの話は鎖から離れることができた犬たちの南極での生き残りの生活。こればかりは実際どのようなものだったかは想像するしかなくて実態はわからないのだが、なかなか良く犬を訓練していると思う。だが犬たちが死んでいくところに焦点が当たりすぎて、どのようなものを食べてどうやって餌をとったか・どのような日常をおくってどうやって生き抜いていたのかという部分の描写が少ないのが不満なところ。本来は生存のための努力と死の両面がしっかりと描かれてこそ、南極の厳しさがよりわかるものだろう。鎖から脱出することが出来なかった犬たちは最後の場面で掘り出されるまでほったらかしだったのも残念で、餌もとれず雪に埋もれるまま餓死か凍死する場面を、厳しいけれど挿入していてもよかったのではないか。