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スチームボーイ評論(13)
今回は親しい友人に薦められて、レンタル店へ。
見れば、2004年公開とあるではないか。公開当時の自分の年齢が、主人公レイに近かったこともあって、映像のメカニックさに興奮しながらも、どこか懐かしさも感じつつの鑑賞であった。
予告にもあったように、かなりの時間とお金をつぎ込んでいるだけあって、映像のクオリティは最高級のものだ。特にボイラーから吹き出す蒸気(スチーム)の動きはまるで実写のよう。ただテレビ画面では暗い部分が見えづらかったのと、明らかにCGを使用したなってところが散見され、少々残念だったが。
映像、音楽、グラフィック、声優はかなりのレベルではあるのだが、いかんせんストーリーの展開がその分、雑に感じてしまった。もう少し冒頭のほうで、スチームボールが何なのか、なぜ大切なものなのかを明らかにしてほしかった。訳もわからんうちに車?が家につっこみ、誘拐され、スチームタワーへ・・・?前半は、少し置いてけぼりをくらった感じだった。
本作のテーマというかミソといえば、祖父と父親との間の、「科学」に対する向き合い方の齟齬だろう。中盤から後半にかけてそのすれ違いがいつしかスチームタワー始動へと結びついていくのだろうが、なんだか鉄砲合戦が始まってしまったおかげで、本題がかすんでしまった感じがする。もちろん、映像としては申し分のない迫力だった。
エンディングの「絵」で、「おっ!」とさせられた。少年のその後もしっかり描かれていて、ほっと一安心した。ちゃんと「お約束」をわきまえている証拠である。エンディングの途中で、空をパラシュートみたいなやつで覆い尽くされ、兵士らしき人が銃を構えている横で、電球が灯っているシーン。これは「深い」。かくして、産業革命において絶対的地位を確立した科学技術は、おじいちゃんが危惧していた通り、戦争の兵器、他者を傷つけるための道具として利用されることになってしまったのだ。しかし同時に、ランプのように文化に灯りをともすこともできるのだと。「科学」は、いかようにでも利用できるというメッセージを読み取ることができるのだ。
公開時は『AKIRA』のような作品を期待したのか、ファンからの反応もイマイチ、興行的にも不発に終わった。
が、月日が経って久し振りに見てみれば(多分劇場で観て以来)、大傑作!とまでは言わないが、“空想科学冒険活劇”としてそれなりに面白い。
謎の発明“スチームボール”。
それを巡る争い。
少年の冒険。
THE王道!
大友克洋もただ純粋にサイエンスとアドベンチャーの娯楽活劇を作りたかったんだと思う。
『AKIRA』みたいな作品が大友克洋、と期待するのはこちらの勝手、酷な事でもある。
映画監督は自分の作りたいものを作ればいいのだ。
作画力はいつもながら圧倒的!
メカニックなどは緻密でディテールまで拘り抜き、中でも空飛ぶスチーム城は蒸気の質感共々圧巻!
また、19世紀のイギリスの街並みも素晴らしく、雰囲気も醸し出す。
ストーリーやキャラ描写がちと弱いのは否めないが(お嬢様がウザい…)、メッセージ性は充分。
科学とは、何なのか。
人類の夢であり、英知であり、力であり、財産であり、富である。
が、それが戦争に使われる不条理…。
科学は戦争の為の武器でしかないのか…?
また、主人公の少年レイにとっては、科学を巡って祖父と父が対立してるのも辛い事だろう。
暴走する父と、それを止めようとする祖父。
単純にどちらが善悪じゃない気もした。
父も戦争の兵器の為に科学を使ったのではなく、ただただ科学の力を証明したかったのだ。
しかし、それが時に世界を脅かす…。
そんな中でレイは、悩みながらも、純粋に科学を信じて…。