1980年にオーストリアで実際に起こった殺人鬼ベルナー・クニーセクによる一家惨殺事件を映画化した実録スリラー。83年にオーストリアで製作され、日本では88年に「鮮血と絶叫のメロディ
引き裂かれた夜」のタイトルでレンタル用VHSとして発売された作品を2020年に劇場初公開。刑務所出所後の殺人鬼が感じる不安、プレッシャーによる異様な行動や心理状態、それらを冷酷非情で凶暴なビジュアル、斬新なカメラワークで表現。陰惨な世界観を「U・ボート」「アンダーワールド」のアーウィン・レダー演じる殺人鬼のモノローグでつづっていく。音楽を元「タンジェリン・ドリーム」のクラウス・シュルツ、撮影をアカデミー短編アニメ賞を獲得した「タンゴ」やジョン・レノン、ミック・ジャガーなどのMVを手がけたズビグニェフ・リプチンスキが担当。監督は本作が唯一の監督作品となるジェラルド・カーグル。
アングスト 不安評論(20)
2020年に、この作品に影響された作品を既に観ている身には、目新しさはないのだが。
実際の人物と事件を元にしているらしいが、なんでこんなの作る気になったんだろう?
犯人のモノローグという手法によって暴かれる、その異常な思考(嗜好)を理解出来なくて、おぞましさしか感じなかった。
ただ、もしもこれが「狂人をネタにしたブラックジョーク・コメディ」という意図なら、わからなくもない。
笑いにくいけど。
引きの構図、同じシーンの長回しが多く記録映画みたいでした。
ナレーション風の独白はありきたりな言い回しが多く、一般人には理解し得ない殺人者の狂気のようなものは感じませんでした。(翻訳の限界かもしれませんが...)
主人公があまりにも体力も計画性もないため現実の殺人の現場はこんなに泥臭いのかもしれないとも想像しました。
とはいえ悪魔の生け贄やハウスジャックビルトを押さえ、残酷なシリアルキラーものNo.1という評価はあまり腑に落ちないです。
序盤の精神鑑定レポートのナレーションも非常に効果的。主人公の精神が歪んでしまった原因が安易に想像出来て分かり易かった。ラストも上手く纏められていて満足度も高い。
2020-143
死体を運ぶシーンや、町や家を徘徊する場面がやたら多く、そのシーンに伏線や緊張感を高める効果もなくひたすら退屈。
無駄なシーンを徹底的に編集し、60分の短編映画にすれば、そこそこの作品になったと思う。とはいえ、過激で危険な作品を期待すると大きな肩透かしを喰らう。この映画はスプラッターにも、サイコスリラーにもなっていません。
良かった点は、クラウス・シュルツェの音楽、犬と若い女優が美しいことくらい。
90分の映画が、体感三時間に感じた希有な作品でした。
商業映画における、編集の重要性を教えてくれた本作に感謝!