直木賞作家・重松清のベストセラー小説を、阿部寛と北村匠海の共演で実写映画化。「糸」「護られなかった者たちへ」の瀬々敬久監督がメガホンをとり、幾度途切れても必ずつながる親子の絆を描き出す。昭和37年、瀬戸内海に面した備後市。運送業者のヤスは愛妻の妊娠に嬉しさを隠しきれず、姉貴分のたえ子や幼なじみの照雲に茶化される日々を過ごしていた。幼い頃に両親と離別したヤスにとって、自分の家庭を築くことはこの上ない幸せだった。やがて息子のアキラが誕生し、周囲は「とんびが鷹を生んだ」と騒ぎ立てる。ところがそんな矢先、妻が事故で他界してしまい、父子2人の生活が始まる。親の愛を知らぬまま父になったヤスは仲間たちに支えられながら、不器用にも息子を愛し育て続ける。そしてある日、誰も語ろうとしない母の死の真相を知りたがるアキラに、ヤスは大きな嘘をつく。
とんび評論(16)
文句なしに傑作でとても上質、観ないなんて本当にもったいない。イチ推しの作品。
しかし、今さらながら阿部寛はつくづく上手い役者ですなぁ。ヤスの人物像そのまんまを演じきっているもんなぁ。
本作は、「64 ロクヨン」「護られなかった者たちへ」の瀬々敬久監督がメガホンをとり、監督の指名で港岳彦が脚本を務めている。〝今観るべき映画”にするのが脚本開発における最大の課題。
私は本作を見て、その課題はクリアできていると感じた。特に後半に出てくるアキラの作文がカギとなり、親子の心の距離をぐっと近づけ、普遍的な人間模様を描き出すことに成功していた。
実親の愛を知らない不器用なヤスが様々な人に助けられながらアキラを育てている姿は、破天荒でありながらも息子への愛情を感じずにはいられない。というより父子の歪な愛の形がどこに到着するのかも最後までわからない。
ヤスの生活の一部となっている商店街には古き良き日本の活気と人情があり、いつまでも見ていたい風景だった。
約1ヶ月間の撮影では岡山の街を封鎖し、地元のエキストラ総勢500人という大規模なロケを実施。風景の小道具などに美術スタッフがこだわり、雰囲気はしっかりと描かれていた。
この風情も見どころだが、重松清らしい人情模様が映画全体に表れているので、子供から大人まで楽しめる作品に仕上がっている。
不器用な大人の優しい「嘘」にも注目してほしい、今の時代に見たい作品だった。
それだけに、名手・瀬々敬久の手によって、どう描かれるか興味深く拝見。映画として、よくぞ139分という尺でまとめあげたという感嘆とともに、阿部寛と北村匠海の親子役としての相性の良さもうなずける。だが、旭が就職して以降の流れが駆け足すぎて、幾つかの心を通わせるべきポイントが抜け落ちているようにも、個人的には感じた。
「過去に出来の良いドラマがあるのにどうして今さら映画化?」ととらえるのか、「こんな時代だからこそ改めてスクリーンで『とんび』の世界を味わって欲しいという願いが込められているんだな」ととらえるのかは、千差万別だろうが、穿った見方をせずとも十分に楽しめる力作である。
というか、戦前生まれの男はみんなこんな感じでしたね。
とても熱い人情ドラマで良かったと思いました。阿部寛ははまり役でしたね。
昭和の街並みや小道具も再現性が素晴らしかったです。
また、濱田岳の食べ物の吹き飛ばし方は見事で本当に理想的な飛ばし方でした。
北村匠海の少年時代の髪型はちょっと変だと思いました(カツラのせい?)
ということで今回は、4月8日公開の阿部寛主演「とんび」。重松清原作ということで結構期待していた本作ですが、やはり蓋を開けても安定感のある話で後味がよろしかったです。
阿部寛、北村匠海、薬師丸ひろ子、安田顕、杏などの豪華キャストが繰り広げる人情もの。この時点である程度の面白さは保証されているわけです。
阿部寛は個人的には今までで1番好きな役柄だったかも。昭和の親父、みんなの親父、不器用だけど優しい親父。ヤスを演じれるのはこの人しかいない。男臭さと渋さがたまりませんでした。細菌は硬い役柄が多いですが、こういう役の方が断然好き。ほんとに良かったです。
話と雰囲気としては舞台が昭和ということもあってか、「ALWAYS 三丁目の夕日シリーズ」の酷似している気がする。薬師丸ひろ子出てるし。あの作品と比べてしまうと確実に負けてしまうのだけど、それでも美術にはこだわりを感じられたしお見事な雰囲気作りで、昭和の懐かしさで心が浄化されました。
その三丁目の夕日と劣ってしまう点としては、登場人物が多いのだけどそれを上手くいかせきれてないというところ。前半部分はなかなかの出来だったものの、途中からヤスと息子・アキラの話だけになってしまったのが勿体ない。これだけ人物がいるからそれぞれの話がもっとあっても良かっただろうし、そもそも話以前にキャラクターに関する説明が無さすぎたなと。特に濱田岳なんて、いい味出しているキャラなんだけど急に参戦してなんの人か全く分からない。シリーズを前提に話を作るか、ドラマにした方が良かった。どちらにせよ、この内容を2時間に収めることはかなり厳しいんじゃないかな。
描き不足なのは周りの人物だけでなく、メインストーリーであるヤスとアキラについても。あるようでない2人の話。この映画で最も肝心なのところなのに、親子の会話だとか出来事だとかがあまりにも無い。ただ、迷惑な親父と反抗期の息子の対立という印象しか残らない。原作はもっと描けているはずだよ、重松清だから。140分もあるのに、だらだらしている間が長すぎた。
主題歌はゆずだったし、後味はかなりいい。面白かったな〜と思って劇場を出たけど、よく良く考えれば雰囲気だけは一丁前な描き不足だらけの映画でした。素材はいいのに料理が下手くそ。まさにこの作品のことを言うんじゃないでしょうか。期待していただけに、少し残念。面白くはあるんですけどね、、、あ、糸の監督が作ったんだなって感じがしますよ。